マジカルヒール編

マジカルヒール編

「マジカルヒール、参上!」今日も街は、彼女が守る。

凛とした瞳に、揺るぎない正義が宿る。

ふわりと揺れるツインテール。誰もが憧れる魔法少女。

「悪い子は、わたしが許さないんだから」

自信に満ちた立ち姿。負ける未来など、考えもしない。

胸を張り、夜の街へ。けれど今夜は、何かが違った。

ひんやりした空気が、首筋をそっと撫でる。

「……だれ? そこにいるの」背後の闇に、影がひとつ。

路地裏にひとり。心細さを、笑顔で隠す。

「だいじょうぶ。わたしは魔法少女だもの」

強がる声が、ほんの少しだけ震えていた。

壁にもたれ、ひと息。その油断が、命取りになる。

無防備に座り込む。スカートの裾が、心もとない。

ふっと気が緩んだ、その一瞬を狙われた。

視線を感じて振り返る。けれど、もう遅い。

「な、なに……っ」足元の影が、伸びてくる。

気づけば見知らぬ地下。冷たい石の床。

「ここ……どこなの?」声だけが反響する。

薄暗い牢。出口は、どこにも見当たらない。

それでもまだ、余裕の表情を崩さない。

「すぐに逃げ出してやるんだから」

けれど魔力は、なぜか応えてくれない。

じわり、と不安が胸に広がっていく。

「どうして……力が、出ないの……?」

立ち上がろうとして、膝が震える。

助けを呼ぼうにも、声は誰にも届かない。

暗がりの中、彼女はひとり取り残された。

強気だった瞳に、はじめて怯えが滲む。

「だれか……たすけて……」

その呟きを、闇は静かに飲み込んだ。

もう、逃げ場はどこにもない。

迫る気配に、彼女は身をすくめる。

「いや……来ないで……っ」

必死に後ずさる。けれど背中は、冷たい壁。

――そして、運命の手が、彼女に伸びた。

「は、離して……っ」両手を、きつく拘束される。

抵抗もむなしく、自由を奪われていく。

縄が食い込み、誇り高い制服が乱れる。

「やめて……こんなの、許さないんだから……!」

けれど、その声に応える者はいない。

両腕を頭上に縛られ、無防備な姿をさらす。

「見ないで……っ」逃れようと身をよじる。

もがくほどに、拘束は強く彼女を締めつける。

太ももが震え、力がじわじわ抜けていく。

「どうして……わたしが、こんな目に……」

誇りが、少しずつ削られていく。

涙のにじむ瞳。それでも、まだ折れない。

「魔法少女は……負けたり、しない……っ」

強がりも、もう声にならない。

拘束された脚を、必死に閉じようとする。

けれど、その抵抗さえ許されない。

屈辱に、頬がかっと染まる。

「いや……っ、見ないで……お願い……」

羞恥に、瞳がじわりとうるむ。

抗う気力が、少しずつ奪われていく。

「たすけて……だれか……」届かない声。

乱れた息。火照る肌。

正義の心が、ゆっくりと揺らいでいく。

「もう……やだ……」涙がこぼれ落ちる。

拘束の中で、彼女はただ震えるしかない。

気高かった魔法少女の、はじめての敗北。

それでも、まだ完全には堕ちていない。

「わたしは……まだ……」

けれど、その抵抗も長くは続かない。

力尽きた身体が、くたりと項垂れる。

「もう……むり……」

抗いの言葉が、甘い吐息に変わっていく。

誇りも、正義も、薄れていく意識の中で。

「たすけて」と「もっと」が、混ざりあう。

堕ちていく魔法少女の、とろけた表情。

もう、抵抗する気力は残っていない。

拘束されたまま、彼女は静かに陥落する。

かつての凛々しさは、もうどこにもない。

――敗北の果てに、彼女が見せた顔とは。

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